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ウクライナ-ロシア情勢整理 経済影響分析

 

3月1日午前ゼロ時(JST)にベラルーシ国境付近で開催された停戦協議は大方の予想通りロシア側が非常に厳しい条件を提示し、ウクライナ側は飲めるわけも無く議題を持ち帰り再度協議が開催される流れとなりました。

 

その間もロシア軍はウクライナへの攻撃を続けており、武器供与がNATO加盟国だけでなくフィンランド始めとした非NATO加盟国からも実施されています。まだ軍隊を送っている所は無いようですが、引き続き民間人含め犠牲は増えていくと見ていいでしょう。

 

 

一方SWIFT排除、EU圏内へのロシア航空機発着陸の禁止などによりルーブルの暴落が起きています。ロシア国内では取り付け騒ぎも起こっているようです。

 

 

かんっぜんに第一印象のまま進めますが、今回の侵攻で最も身近に影響を感じられるのは戦闘によるウクライナ周辺の物流の分断とロシアに対する経済制裁の影響による世界経済おいては日本経済の変動だと考えています。

 

金融面の影響、たとえばSWIFT排除によるロシア相手のルーブルによる金融取引が出来ないことで安定資産である金価格や逆に新興の暗号通貨価値が上昇しているというのもありますが投機筋には影響あるもののあくまでその業界のみの影響に留まると想像しています。ドル決済やユーロ決済が不可になったらそれはもう大変ですが。

 

ということで、この辺りは若干土地勘はあるにしろ非常に影響範囲を整理するのが難しいのですが、素人ながら格闘したいと思います。

 

 

ロシアおよびウクライナに頼っているものは何か

まず、経済への影響を考える上でロシアとウクライナに対し何をどの程度依存しているかを理解しておく必要があります。

 

野村アセットマネジメントの記事を見ると、ロシアの主要産業はエネルギー産業です。原油生産の世界シェアが約12%で世界3位、天然ガス生産は約17%で世界2位、石炭が約15%で世界2位となっています。

そのほか、ネオン・クリプトン・キセオンといった希ガスやプラチナ・コバルトやパラジウムといったレアメタル、小麦が高い世界シェアを持つ品目として挙げられます。

 

ということでここではエネルギー、希ガス及びレアメタル、小麦の3つに絞って影響を見ようと思います。

(ほかにもあるんでしょうが。。。)

 

エネルギー

地理的には当然ながらロシア産各エネルギーの主要な取引先は欧州各国で、ロシア西部から東欧を抜けドイツをはじめとする欧州主要国への天然ガスパイプラインが整備され稼働しています。

 

画像は天然ガスパイプラインの敷設図。毎日新聞 2014年3月9日の記事より。

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こちらは石油パイプライン。ウクライナに製油所が多くあるのがわかります。

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これだけのパイプラインが整備されていることからわかるように欧州のエネルギーはロシアに大きく依存しています。特に天然ガスはロシア産のものに3分の1は依存していると言われており、ウクライナでの戦闘によりパイプラインが寸断されるまでもなくロシアが天然ガスの供給を止めてしまえば欧州のエネルギーに影響が出ることは言うまでもありません。

 

この記事では書かれていませんが現在バルト海の東からドイツへ伸びる”のルドストリーム”と並走する形で”ノルドストリーム2”が建設され、稼働を待つばかりの状況でしたが稼働前にアメリカによる経済制裁の一環で稼働計画は中断されました。

稼働前であり影響は限定的ではあるものの、もしロシアがパイプラインによる石油および天然ガスの供給を止めたり、ウクライナの製油所の稼働が止まることがあれば欧州のエネルギーが逼迫することは間違いなく、国民の電気代の支払いが数倍に膨れ上がるという想像しやすい所から巨大な電力を必要とする工場の稼働に影響が出ることで欧州製品の供給不足が発生しそうです。

 

ただ幸いにして欧州各国、特にドイツなどの主要国は最大4か月分の天然ガス備蓄を行っているため、すぐに壊滅的な影響が出ることは無いと思われますが、石油やガスの値上がりは必須でしょう。既に値上がりが続いていますが今後もこの状況が続くことはほぼ間違いないと考えられます。

 

 

希ガスおよびレアメタル

個人的にはここの影響が一番大きいと考えています。

結論から言うと昨年後半から顕在化している世界的な半導体不足を加速させる影響があると見ています。

 

順を追って整理すると、希ガスのうちネオンガスはウクライナが世界の70%近くを供給しており、ロシアのウクライナ侵攻により供給に影響が出た場合代替の調達先が非常に限られることが想定されます。

 

このネオンガスはあの繁華街の看板に使われるだけでなく様々な用途があり、その中で危惧しているのが半導体製造において必須となる工業用レーザーです。レーザー照射に使うガスは交換品で製品によりますが寿命は機械1台につき10日から長くて30日で交換する必要があります。原料となるネオンガスの供給が出来なくなれば消耗品のガスが交換できなくなり、機械が稼働できず半導体生産が止まるということになります。

 

既に述べたように半導体不足はかなり悩ましく、年末では今まで1万円だったものが40万円にまで値上がりするといったケースもありました。それを見据え生産ラインの増強をサプライヤー各社は計画しており、春ごろから工場の稼働が始まるという事でしたが今時点では何時頃半導体不足が解消されるのか見えていません。

 

半導体はざっくり言うと原料を工場に持ち込んで製品として出てくるまでに大体3か月かかると言われています。よって正確な供給見込みが見えるのは3カ月先になりますが、当然サプライヤー各社はそれじゃ仕事になりませんから少なくとも年間の需給計画を立て、それを基に顧客と商いを成立させてきました。

ですがこの半導体不足のせいでサプライヤーからはまったく目途が立たず見えても供給を約束できるのは3カ月先までという回答が頻発しています。そこに希ガスの影響が出れば更に状況は悪化すると見ていいでしょう。

 

経済系のニュースや記事ではウクライナ情勢による半導体不足への影響は限定的とする見方もありますし、更に痛手を被るという見方もあります。しかしここにおいては私は後者の立場です。

 

半導体不足により半導体が値上がりし、電化製品、精密機器、自動車などはより値上がりするか供給に影響が出るでしょう。既にトヨタのランクルは4年待ちですしね。。。

 

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希ガスについてばかり話してしまいましたが、レアメタルパラジウムはロシアの世界シェアが40%でNo1です。(副産物になるプラチナも16%で世界シェア2位ですが1位の南アが70%以上を占めているので影響は限定的でしょう)

パラジウムの用途の一つは歯の詰め物ですが、これが値上がりしても幸い代替手段もありますし保険適用なのでまだ影響は少ないでしょう。

一番影響があるのは自動車で、排気ガスフィルターに利用されています。昨今のカーボンニュートラル規制に思い切り舵を切っている手前、パラジウムをケチることはできそうもなく、自動車の価格はこれまた上昇すると見られます。ついでに言えばエネルギー不足によるガソリンも高止まりなので誰も車のらないんじゃないかって思いますね。

 

小麦

 

寒冷地とはいえ広大な国土から生まれる小麦がロシアの主要輸出品目となっています。

ただ、小麦は主要穀物として欧州各国で生産されており、穀物自給率を見ると欧州各国高い率を達成しています。特にフランスは農業国で有名で200%近い自給率を誇りますので、仮にロシアから小麦を確保できなくなっても影響は非常に限定的で、若干の価格上昇はあるかもしれませんが石油等のエネルギーに比べ状況が逼迫するとは考えにくいでしょう。

 

以下グラフは社会実情データ図鑑より

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そもそも。。。

 

ここまで書いて置いてですが、この前提はウクライナ侵攻で止まった場合のみ、言い換えればウクライナ以外の国が軍隊をロシアに向けることになれば状況は大きく変わります。

米国バイデン大統領は米軍の出動は明確に否定しました。非NATO国へ軍隊を送るということは無いということがハッキリしました。欧州各国も武器の供給と人道支援および経済制裁のみに踏みとどまっています。

 

一方停戦協定は難航し、ロシア軍は戦備を整え24時間から72時間以内にキエフへ本格的な侵攻を始めると見られています。これは英国のレポートですがキエフに肉薄しつつあることがわかります。

 

次のターニングポイントはキエフ包囲および占領がいつか?ということになりそうです。

 

ロシア軍は未だ制空権を確保できず、ロケット砲やミサイルによる居住地への無差別攻撃を始めました。歴史的建造物の多いキエフにまで堂々と攻撃を行うのかわかりませんが、ロシア軍の展開状況を見るにキエフ制圧は本気に見えます。

 

一方ウクライナ軍は武器の供給を各国から受けているものの派兵は行われる気配はなく、よく防衛しているもののウクライナ国境外に集結しているロシア軍を撃退することは難しいでしょうから、訓練を受けた兵士は減り、結果徐々にゲリラ的な戦闘様相に移行せざるを得ないと思われます。

ここでいうゲリラ的な戦闘様相は歩兵中心で十分な指揮系統を維持できない状況に陥るという意味です。

 

そうなると停戦協定をいつ結ぶかになりますが、ロシア側は(こんな状況でウクライナを親ロシア政権が統治できるのかという疑問はともかく)今の姿勢を崩さないでしょうから泣く泣く協定を結ぶかキエフ制圧後ゼレンスキー大統領が国外に移ったタイミングで親ロシア政権によるクーデターを行うのではないかと推察します。

前の投稿で書きましたが、ロシア側でそういった動きがあるのではとメディアが報じていますね。

 

 

なお、ロシアが経済制裁に折れて軍を引っ込めるということは無いと私は思いますので、停戦協定がいつ結ばれるのか?それはキエフ包囲後ではないかだろうか?というのが私の見立てです。ロシアの進行速度に寄りますが1カ月から2か月ではないかと。その影響をうけてエネルギー不足(原油高含む)と半導体不足は少なくとも3カ月は続くのではないかと思います。

 

なおこの文章は素人による個人的見解ですのであてになさらぬよう。

 

なんかしまりが悪い終わり方だな。。。